妄想 15インチフィールドコイルユニットと定電流型励磁電源

最近、妄想していることがある。
ウーファーをフィールドコイルタイプに変えたらどうなるんだろう?もたつきのないスピード感のある”重”がつかない低音とはどのようなものか?我が家のシステムでそれは成立するのか?中高音ドライバーとちゃんとつながるのか?
本当は今あるセットはいじらずに8~12インチのフルレンジ一発のサブシステムを導入してフィールドタイプスピーカーがどんなものか確かめてみるのが一番かと思う。でもなぜだか現有システムのウーファーを入れ替えたらどうなるかが気になって仕方がない。だから妄想なのである。
ALTEC 515Bに置き換わる15インチのフィールドタイプ候補はJENSENかMAGNAVOXが市場に数が多いようだ。純粋なウーファーでもよいし、フルレンジをウーファーとして使うのもいいと思う。JENSENとMAGNAVOXの会社としての関係は間に線を引くのが難しいのでここでは同じものとして扱う。
①F15LL       かなりポピュラー(6本フレーム,電磁石ケース=黒)
②F15N        市場で12インチのF12Nは見るが15インチは見たことがない
③P232(C513E)  フレーム形状も何種類かあり(4本フレーム,8本フレーム、色=ゴールド塗装有無、フィールドコイルの規格460Ω~5200Ω)
JENSENかMAGNAVOXの15インチのフィールドユニット・ペアは日本では最低でも15万円、高いと40万円を超えてしまうがeBayをウォッチングしていると時にはUS$500台で落札している場合もあるようだ。

妄想ついでに先日eBayで比較的安価で落札されていたユニットをベースに励磁用電源の設計をしてみた。(ステレオとして2本分の電力を供給する)
型式の表記なし(多分旧型のP232・・・1947年製)
ヴォイスコイルインピーダンス=8Ω
フィールドコイル抵抗=5,200Ω
楽器用
15インチタイプユニットのフィールドコイルは18W程度の電力を供給してやる必要がある。5,200Ωのコイルで18Wを消費させるための供給電流はSQRT(18/5,200)=約58.8mA,となる。出力に少し余裕をみて電流を60mAまで流せるようにすると、この時のフィールドコイルの消費電力は18.72Wとなる。この18.72Wを上限とし、下は10W程度から調整ができる励磁電源ユニットを設計してみたいと思う。
巷では励磁電源は定電圧タイプが良いとか定電流タイプが良いとか議論がなされているが、フィールドコイル両端に動作中の音楽信号が重畳され励磁電源が揺さぶられているというレポートがあり、この影響を排除するためには定電流タイプが良いと自分は考える。
300Vクラス60mAを供給できる定電流型励磁用電源を設計する。
定電流特性を得るためにはどのようにしたら良いか?定電流出力を得るための供給電源の出力インピーダンスは理想的には無限大となる。実現可能な範囲で電源インピーダンスを大きくする方法は定電流ダイオードの使用等いろいろあるが、今回は5極管の高内部抵抗を利用した疑似定電流型の回路で設計したいと思う。
無理なく60mAクラスの出力電流をとれる5極管として6L6Gを選んでみた。
6L6Gを5極管接続で定電流出力を得ることを考えねばならないが、まずは3結での特性をチェックする。

Ec1=0V時の特性に注目するとEb=120Vのあたりで出力電流は今回得たい60mAを指している(赤丸のポイント)。これは5極管接続をした場合、Eb=120V,Ec2=120V,Ec1=0Vで出力電流60mAが得られることを示しているといえる。6L6GのEc1=0V時の5極管接続時の特性グラフを見てもEc2=120Vの仮想曲線はEb=120Vあたりで出力電流が60mAを示している点からも同じことがいえる。5極管接続時のEb-Ip特性曲線(パラメータはスクリーングリッド電圧Ec2)グラフでEc2=120Vの仮想曲線はEb=120Vあたりで十分に曲線が寝ており高インピーダンスであることがわかる。また肩特性を示すEb=60Vからの距離も十分に遠いので電源供給出力18W時の6L6Gの動作基準点をここに仮決めする。

Eb=120V,Ec1=0V,Ec2=120Vでフィールドコイルに60mA(312.0V)を供給するためには平滑後の直流電源の電圧は約432.0V必要と計算できる。
供給電力を調整可能とした場合、下限の10W時の動作を考えると供給電流は43.9mA, フィールドコイル電圧は228.0Vと計算できる。上記の直流電源電圧を基準とすると6L6Gにかかるプレート電圧は204.0Vとなる。上に記述した5極管接続時のEb-Ip特性曲線に当てはめるとプレート電圧204V時Ec2=87Vでプレート電流は励磁コイル電力10Wに必要な43.9mAを示す。
電源部の出力電圧を432.0Vになるように設計(調整)し、6L6Gのスクリーングリッド電圧を120Vから87Vまで調整可能な回路を設計すれば励磁コイルへの出力電力を18.7Wから10Wへの調整が可能となる。
スクリーングリッドの電圧を120Vから87Vまで調整可能とする回路を考える。

供給電源はコイル供給に使用する432.0Vを利用する。回路としては供給電源Ebbから固定抵抗R1を通じて6L6Gのスクリーングリッドに接続しVRを経てR2を通ってグラウンドに落とす。この時VRとR2に流れる電流をI2としたときR1に流れる電流I1はI1=I2+Ic2(スクリーングリッド電流)となる。I2×(VR+R2)=Ec2となり、Ec2+I1×R1=425.9Vになる組み合わせを考える。スクリーングリッド電流はプレート電流,スクリーングリッド電圧と相関関係があるが、ここでは6L6Gの動作例から推測し、Ic2:Ip=0.1から0.15の間で落ち着くものとして考える。とりあえず、0.1にて計算を進める。VR部で発生する消費電力を考慮しながら上記の条件からR1,R2,VRを計算する。Ip60mA時で考えると、Ic2:Ip=0.1の場合6mA程度の電流がスクリーングリッドに流入することになる。Ic2:Ipが予想より大きくずれて0に近づいたり0.2に近づくことを最悪値として考えた場合も考慮しつつR1,R2の固定抵抗値を仮決めする。スクリーングリッド電流が0のときはI2=I1となり18Wの最大電力時は(VR+R2):R1=120:(432-120)=120:312となるのでVR+R2すなわちスクリーングリッドからグラウンド側の総抵抗とスクリーングリッドから電源側の抵抗の比率は大まかに1:3と見積もれる。最少電力時の10W時はこの比率は87:(432-87)となり約1:4となる。VR値が大きいとき1:3となり、小さいとき1:4となるようにすればよい。またI2が多くなればなるほどIc2の誤差の影響は小さくなるが、電源部への負担が大きくなることと、VR部での消費電力が大きくなることが考えられるのでIc2が20mA以下で収まるように考えるとR1,R2はE24系列で16kΩ, 3.9kΩあたりを選ぶのがよさそうである。この時VRの最大値は18W出力時で約5kΩとなる。このR1,R2をうまく選ばないとVRの最大抵抗値が大きくなり20kΩ以上になると、VRでの消費電力が定格容量に近づいたり、超えてしまう場合があるので注意が必要である。東京コスモスの可変抵抗(30φ)の使用を前提とするとVR値が20kΩ以上必要となった場合、炭素系の可変抵抗しかラインナップされていないため定格電力が0.6W(または0.4W)となってしまう。巻線型可変抵抗の定格電力は2.5W程度あり余裕があるが、20kΩより大きなものはラインナッップれていない。巻線型可変抵抗が使用可能な最大抵抗値20kΩ以下で最大出力が得られるR1,R2の組合せを見つけることが重要である。
R1,R2の決定には上記のことを考慮しながら表計算ソフトを使いながら、R1,R2,可変抵抗の最大値、出力の上下限性能をトライ&エラーで求めた。R1=16kΩ, R2=3.9kΩの場合、出力18.7W時のVR値は約5kΩとなりVRがこの値を超えると出力はそれ以上出るが、スクリーン電圧がプレート電圧より高くなる。そのため18.7Wを上限とするのが望ましい。最少出力はVR最小値で約7Wまで絞ることが可能となる。極端な例としてスクリーン電流比が0となった場合を想定すると最大電力はそのまま、最少電力は9.4Wとなる。反対にスクリーン電流比が0.2となった場合は最少電力5.8W,最大電力は18.7W(VR値12.1kΩ)となり、スクリーン電流比が多少想定範囲を超えても20kΩ単位の巻線抵抗で希望する範囲で出力電力の調整が可能である。
ここまではEbb電圧が432V固定で計算を進めてきたが、電源部のインピーダンスの関係でEbbは最大出力時に最低となり、コイルへの出力電流が減少すると、Ebbは上昇する。出力10W時は18.7W時と比べて6L6G一本当たりの電流が15mA程度減少するためTotalでは30mAの減少となる。電源側の抵抗やチョークコイルのDCRを通る電流が上記の値だけ小さくなるため、それらを通る際の電圧降下分が減少し、結果としてEbbは上昇する。たとえば電源部のDCR合計が300Ω程度であった場合、電圧降下の減少分は300×30mA=9Vとなり、Ebbは441Vとなる。したがって5極管接続で出力をとる際の動作ポイントは図内の赤線ではなく傾きが小さくなり紫線のようになる。しかし、最大電力側の動作ポイントが同じで動作ラインの傾きが減少しても、5極管接続時のEb-Ip出力特性が寝ているため特に問題は発生しないと考える。

Ebbに432v供給する回路を考える。電源トランス2次側電圧が400-450Vくらいあって電流容量が170mA以上あれば5AR4整流管で両波整流して2段くらいのフィルターをかまして、あとは抵抗値可変のセメント抵抗などで電圧を調整すればいいのではと思う。電源部の計算は面倒なので、いつも現物でカット&トライでやっているので・・・
 記事のタイトルは妄想ですので書かれた内容には考え方に間違いがあるかもしれません。またこの励磁電源はまだ実際には製作していません。そのため追試(?)される方があったとしても自己責任でお願いいたします。数あるJensen-Magnavoxのフィールドスピーカーで5200Ωタイプはあまりメジャーではないようなので300V-60mAの励磁電源を作られる方がそうそういるとは思えませんが・・・
今後実際に製作した場合は、この記事を修正しようと思います。

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