頭の体操(LCRイコライザの考察) 2

5. その他のイコライザカーブへの応用
RIAA以外の再生カーブに対応するには、カーブごとに規定されたT1,T2,T3値を同じ条件のもとLCR定数の計算をします。
原回路形式におけるRIAA及び他の規格に対応するLCRの各定数計算結果を下記に示します。

ここで算出した各イコライザーカーブに対応するLCRの値はあくまでも計算結果であり、特性を保証するものではありません。
6. 橋本トランスのRIAAイコライザ用コイルの推奨回路におけるLCR定数設定について
ここまでは定インピーダンス・ブリッジ2段で構成するフィルタ原回路にて考察を行ってきました。橋本トランスの推奨回路と、原回路には違いがあるとともに実際に使用するコイルには直流抵抗がありその数値も記載されています。
(原回路での計算ではコイルの内部抵抗を無視しています)

図:橋本トランスの推奨回路
また、コイルのインダクタンス値も原回路の定数とは違うものになっており、その他C,R類についても若干違った値が推奨されています。

これらの数値が原回路と違っている場合に実際に再現できるカーブはどのようになるのでしょうか?
推奨回路にはC1と並列にR4=7.5kΩの抵抗が入っています。この抵抗を入れた時に原回路の動作はどのように変化するのでしょうか?
原回路では周波数が低くなると 1/(jωC1)は次第に増加し周波数0にて無限大となります。
1/(jωC1)=∞の領域ではT回路のR3側へ流入する電流がゼロとなります。しかしC1に7.5kΩの抵抗が並列に接続されているのでアースシャント側がオープンにならず、抵抗による電圧降下が発生するためC1による影響が緩和されます。
これは出力が原回路のカーブに対して周波数が低い領域で下がる方向に作用します。
エクセルにて橋本トランスの推奨回路の伝達関数をシミュレートし出力の偏差を確認してみましょう。
原回路の計算時はR4に500MΩを代入してほぼ無視できる状態にして計算をすることにします。
まずは、このシミュレータが正しく計算できていることを確認するため、原回路でコイル抵抗が0の理想状態で計算してみました。

コイルに抵抗もないため、RIAA理想計算値と、回路シミュレータの結果に誤差(偏差)はほとんどありません。
次に、この原回路での計算にコイル抵抗を加味して計算します。

内部抵抗を考慮したことにより、100Hz以下の低域に減少の傾向がみられ、10Hzにおいては約-0.27dBの偏差がみられました。(L値は理論計算値である1.72Hで抵抗は18.1Ωを計算に使用しました)
 次に橋本トランスが推奨するLCRの値でシミュレーションしてみた結果を示します。

1kHz以下のゾーンにて偏差はプラス側でうねっており、低域での最大偏差は10Hzで+0.4dBです。
原回路の計算値に内部抵抗を考慮しただけの結果の方が、橋本トランス推奨値よりも素直なカーブで偏差も少ないという結果となってしまいました。これにはきっと何かの理由があるかとは思いますが・・・

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