Bass Booster

前回の記事で、自作のフィールドコイル フルレンジユニットの修理が完了したこと、試聴の結果まだ低域に不足感を感じるため、何らかの低域ブースト施策が欲しいということとそれを600オームの定インピーダンス型フィルタ(LCRイコライザベース)で実現できそうというところまでを書きました。
 2段のLCRーEQ回路のうちターンオーバーをつかさどる段のみを使用すれば一定以下の周波数帯を持ち上げそれ以上の高音部はフラットにすることができます。またRIAA以外のEQ補正回路では T1,T2の組み合わせが違うため持ち上げる周波数と低域増強量がそれぞれ違っています。RIAAに比べて低域上昇が少ない組み合わせがあるということです。RIAAを例にとると500Hzより下の周波数帯が20dB/decで50Hzまで持ち上がる(K=10なのでスロープより低域側は中域に対して20dB高くなる)特性を持っています。この時のLは 1.71HとなりCは4.77µFです。RIAAでの低域側上昇はさすがに低域側を持ち上げすぎると思いますので6~10dB程度に抑えるような値を探すことにしました。各種のイコライザカーブを比較したところFFRRカーブが比較的低域の増加量が低く12dB程度の上昇に抑えられています。FFRRの場合Lは0.57H、Cは1.59µFになっていますのでRIAAに比べてL,Cともに定数を減らす方向で最適値が得られると見当がつきました。
 実質フィルター回路を組む際。問題となるのはLの選定だと思います。専用でコイルを製作してもらうとなると非常に高価になってしまう懸念があります。そこでLの値がmHレベルではなくHのあたりの桁数になることを利用し、市販の安価なチョークコイルがないか探してみたところ、ゼネラルトランス販売のPMCシリーズのチョークコイルが値によっては2000円程度で存在する(L値は0.9H近傍)ことが分かりましたので、これを使って希望の回路(低域上昇を数dB程度となる)が導き出せないかシミュレーションを行いました。


 基準点として低域側を6dBまで持ち上げるためのL,C値の組み合わせとして
Ro=600Ω
T1=3000(53Hz)
T2=1500(106Hz)
K=2
のとき
L1=0.9H
C1=2.5µF
にて上昇量約6dBの低域ブ-ストできるポイントを見つけました。
ちなみにこれが成立するときのR1,R3は
R1= 200Ω
R3= 800Ωです。
R4= 7.5KΩはRIAAイコライザの橋本電気推奨回路のまま手を付けていません。
低域の6dB上昇が今回の最終的なポイントであるならばいいのですが、これがブースト過剰だったり不足だったりしてブースト量を変えなければいけなくなるかもしれません。同じエクセルシミュレータを使用して、低域上昇量を大きくできたり少なくできたりする他のポイントを探してみました。上昇量の変更を行う際にL1,C1を変更させずに、R1,R3のみで行えるとしたら回路も単純になりますし、値段の張るL1,C1に多重の投資をしないで済み安価で済むことになります。このポイント探しの作業をしていて、低域側6dB上昇の回路を基準としてK値の変更を行う際L1,C1値を変えずに上昇量を可変することは意外と簡単なことに気づきました。
以前にも書きましたが
C1=T1/(K*Ro/(K-1))
L1=C1*Ro^2
となるため、C1が変化しなければL1も変化しないことは一目瞭然です。
低域の上昇量を抑えるためにはKを小さくすればよく、上昇量を増やすにはKを大きくとればよいことがわかり、使いたいK値を先に決めてC1が変化しないようなT1を合わせて決めればよいことになります。
結果、5通りの低域ブーストの定数を導き出すことができました。
ブースト量は
4, 4.8, 6.0, 7.4, 9.4dBです。

5種類のフィルターの減衰特性は以下のようになります。

減衰カーブ5段切替のフィルター回路の全体は以下のようになります。

  

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