LCR トーン・コントローラー

LCRの定インピーダンスBASS BOOSTERを設計していてBOOST量の増減が意外と簡単にできることに気づきました。またこの回路は周波数を高域側にずらせば高域の減衰用にも応用できること。またLとCの配置を反転させれば低域側の減衰回路と、高域側の増強回路が作れそうです。

前回作ったエクセル・シミュレータをLC入れ替えた回路で作ってみたところ思ったとおり低域の減衰と高域の増強特性が得られることがはっきりしました。本来ならばこのエクセルシミュレータは検算用で、回路理論から欲しい周波数特性を実現するL,C,Rを導き出す方法をとりたいのですが今のところ証明できたのはL1/C1=Ro^2とR1=Ro*(K-1)/(K+1)とR3=2K/(K^2-1)までです。(ここでのKは低域周波数側の立上り開始点に相当するT1値と高域側の増強終了周波数に相当するT2値の比率T1/T2と解釈してください)。ここまでの条件ではR1,R3は一意に決定できますが、LCについてはL1/C1=Ro^2を満たす無限の組み合わせから選ぶことになってしまいます。そこでシミュレータにL,C値を代入してT1,T2で決定される伝達関数と極、ゼロの位置を比較して数値を追い込んでいく方法をとりました。
A=20*LOG{SQRT[ (1+(T1*ω)^2) / (1+(T2*ω)^2)]}が描くグラフとシミュレータにL,Cを代入して得られたカーブが一致するL,C値を探すというやり方です。
5, 600Hz近傍を中心として、高域側、低域側双方をフラットポジションを除いて±6dBまで4ステップで刻むことのできるL1,C1,R1,R3の値を算出し、その時の再生カーブをグラフ化してみました。

LCRの組み合わせは以下の通りです。

これを回路にて表すと

となります。(上の3つのグラフ、表、回路は記事訂正に伴い差し替えました 6/15)
設計はLCRイコライザと同じインピーダンス600Ωで行っていますのでプリアウトが600オームであればそこにこのトーンコントロール回路を挿入することができます。
この回路構成で自分が気に入っているところは、低音増強、低音減衰、高音増強、高音減衰の4つのゾーンごとにLCの組み合わせが各1組で済んでいること、増強・減衰幅が少ない時の回路挿入損失が少ないことが挙げられます。最大の挿入損失でも約12dBであり一般のトーンコントロール回路に比べて非常に少ないことです。フラットポジションでは挿入損失がありません。少し変わっているところは低音を増強することは中高音を減衰することになるため聴感上のゲインが減ることです。使うときっと違和感を覚えることと思います。
 断っておきますが、この回路は実際の製作にて追試をしたものではなくあくまでも私個人の遊び半分の計算結果であり、信頼性を保証するものではありませんので、製作される方は自己責任でお願いします。ここで使っている特にLの値は手に入れやすい値に狙いをつけて選定しています。
追記:2022/06/03
相変わらずL,C値を得る計算式を論理的に導き出すには至っていませんが、少なくとも当てずっぽうではない方法で値が特定できる実用的な計算式がわかりました。
T1=(Lower Limit: 低域減衰時, 上昇開始点: 高域上昇時)
T2=(下降開始点: 低域減衰時, Upper Limit: 高域上昇時)
K=T1/T2 (T1>T2)
C1= T2(μsec)*1.224*10^(-6)*K / ((K-1)*Ro)    (F)
C1= T2(μsec)*1.224*K / ((K-1)*Ro)       (μF)
L1=T2(μsec)*1.224*10^(-6)*Ro*K / (K-1)   (H)
このL,C計算式はRo=600Ω, 150Ω, 5kΩの3パターンでエクセルシミュレータで求めた値とほぼ一致することを確認しました。残念ながらどこから定数1.224が出てくるのかいまだにわかりませんが・・・
※6/12 新記事投稿に合わせて削除

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