600Ω定インピーダンス型LCRイコライザユニットの設計・製作⑤

今回はインダクターの製作について記事にします。
インダクタのコアについてはTDK製フェライトコアPC40-EI60-Zを選定したことは以前の記事で述べています。実験的に2個購入して、必要な巻き数のあたりを付けるところから始めて、目途がついたので残り2個も購入しました。サランラップ1枚をE-Iコア間のギャップに挟み込む場合のAL値3,422(nH/N^2)から各L値を実現するための巻き数とΦ0.29UEWマグネットワイヤを使った時の直流抵抗値の予想値を下に示します。


 高域ロールオフ用のインダクタ2個、低域ターンオーバー用のインダクタ2個について実際に製作に入りました。巻き線機は以前自作スピーカーユニットを製作した際に使用した手作り巻き線機を引っ張り出してきました。巻き線枠(ボビン)は回転軸部の穴形状が四角になっているため消しゴムをボビン穴形状に合わせて切ってセンターに穴あけをしたアタッチメントを製作しました。高域用のコイルはL値も小さく、必要なL値の種類も4種類だけなので4つのコイルは独立で巻くことにしました
 いざ実際にコイルを巻き始めたところで次のことが分かってきました。
①コイルを密にまくことは面倒くさいけれど、それほど困難ではない。
②巻き幅に対する巻き数は当初の想定数より12-15%少ない。(結果として層の数が増え巻き数に対する電線長が伸び、抵抗も増えてしまう)
③層間の絶縁紙は自分で使うので材料にはこだわらずコピー用紙を切ったもので良しとする。


 この程度分かったところで、線長の長い低域用のLについて実現方法を考えてみました。
最大4.43Hのインダクタに必要なマグネットワイヤの巻き数と長さは事前の計算では1134回巻き、85mと想定していましたが、巻き数は良いとしても、層数が増えて長さも長くなることが既に予想されていますので、こちらについては7ポジションのL値の実現は別巻きにはせず、中間タップを6カ所出しながら1本のワイヤで実現することとしました。巻き終わったところで4.43Hまでの間の直流抵抗値は、約29Ωとなっており、計算予想値の22.3Ωと比べて30%多くなってしまいました。(ワイヤの長さを求める計算を考えていた時点では層間紙の厚さも考慮していませんでしたので当然の結果といえます)それでもRIAA用の1.8Hタップまでの直流抵抗は16.7Ωとなっており、ゼネラルトランスのインダクタと比べてもまだ抵抗は低めに実現できているため実用性には問題ないと判断しました。
 コイル4個が巻き上がり、次はギャップのL値の調整に入るところですが、ここで1点問題が発生してしまいました。最後にEコアとIコアを締め付ける役割と磁束もれをキャンセルする役割を持っているはずのバンドについて自分の発注ミスで1個手に入れることができませんでした。再発注を行ったのですが、ショップがこの商品の取り扱いを完了してしまったためもう手に入れることは出来ません。仕方がないのでアルミ板の切れ端を使ってこのバンドを作ってみましたが、コアの締め付けに関して保持力が長期に渡って維持できるか疑問、磁束もれに対しての効果は期待できないといったことから、銅箔のショートリングを導入することを思いついて巻いてみたところ残念なことにL値が想定の約半分に低下してしまいました。ということでサランラップでギャップをつくって締め付け力で調整するという思惑は到底実現できないことが分かりましたので、早々に銅箔ショートリング案は却下となりました。4.43Hの端子で、ギャップ無の状態で約6Hをラップをはさんで4.43Hに落とすのが当初の目論見でしたが、銅箔をまくと、ギャップ無でも3H台の値しか得られませんでした。磁束もれについてはあきらめる結果となってしまいましたが、もう1件の密着保持性に関しては何らかの手をかけるべきということでアルミバンドに代ってコアを締め付けるために自作のステンレスバンドを製作して締め付けることとしました。これはステンレスの0.1mm板材をリボン状に切り抜いてリングにしてM3のビスで締め付ける構造としました。これで既定のL値を得ることに成功し、締め付け保持の安定性についても問題解決と考えています。写真を添付します。(左側)


既製品のバンド利用については問題なくL値の調整ができました。
製作が完了した4つのインダクタについて実測の測定データを添付します。


インダクタンス値の長期安定性は、使用開始後、実際に年月をかけないと結果はわかりませんが、少なくとも製作時においてはインダクタンスの誤差3%以内に収まったことから、オーバーしてしまった直流抵抗値を反映してシミュレーションのやり直しを行いました。結果としては一度計算して出した他のR,Cの値は変更不要ということで進めます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました