今回は軽い読み物です。
私の所有しているUV845アンプの使用歴が20年に差し掛かったところでオーバーホールを行いました。その内容は多岐にわたりますが、その時オーバーホールに合わせて行った改造の一つにUV845ヒーター回路に突入電流制限回路を設けることでした。この先も長く真空管の寿命を持たせるために電源投入時の突入電流を抑えることが目的です。実現方法は至極単純でヒーター回路にパワーサーミスタを直列に挿入するだけです。採用したパワーサーミスタは8D2-15LDというタイプで負性抵抗を持っています。このサーミスタは電源投入時、温度がまだ低いとき高抵抗を示し、通電が始まりだんだんと温度が上昇すると抵抗値が低減します。電源投入時の高抵抗で突入電流を防ぐことをもくろんでいます。ただし、電源投入後時間がたってサーミスタの抵抗値は下がるといいますが、ゼロになるわけではないため本機では、タイマー回路によるサーミスタのバイパスを行っています。下にUV845のヒーター部分を抜き出した回路を示します。

回路の中断あたりがUV845のヒーター回路部分です。UV845のヒーターは電流を3.25Aも消費するためトランスの10V巻線を2回路使用しています。巻線をパラったすぐ後に挿入されているのがパワーサーミスタです。この回路でほんのちょっと工夫しているのはパワーサーミスタのバイパス回路です。回路図上段のトランス1次巻線の部分にH3Y-2というタイマーが入っているのがお判りでしょうか。このタイマーの設定時間を45秒程度に調整して使っています。このタイマーがONになるとタイマーの隣に記載しているパワーリレーLY2が作動します。このLY2が作動する前はサーミスタの隣のLY2の1番接点が閉じていてパワーサーミスタがON状態となり電源ON時の突入電流を防ぎます。タイマーがONになるとLY2の3番接点側がONになりますのでパワーサーミスタはバイパスされます。HY2タイマーの接点は高電流には耐えられませんのでHY2はパワーリレーの駆動用に使用して、実際のヒーター電流入り切りはLY2に仕事をしてもらいます。LY2の接点の容量はAC/DC負荷ともに10Aとなっていますので845のヒーター回路に用いても問題はありません。