この章ではブリッジT型2段構成の定インピーダンス再生イコライザの各LCR値の算出のための方法を提示します。回路の構成と各LCRの番号は下図を参照してください。

算出式を導き出すための式の途中展開はblog側記事にLINKを設定しますのでそちらをご参照ください。
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LCR値算出に必要な公式
Bridge-T/1
R1=Ro*(K-1)/(K+1) R3=2K*Ro/(K^2-1)
C1=T1*(K-1)/(KRo)
L1/C1=Ro^2
Bridge-T/2
R2=Ro*(K-1)/(K+1) =Ro T3=C2*Ro
L2=Ro^2*C2
この公式を使用したRIAAカーブ用LCR理論値の算出。
Bridge-T1
K=10, T1=3183(μsec), T2=318.3(μsec)
R1=490.9 Ω
R3=121.2 Ω
C1=4.77 μF
L1=1.719 H
Bridge-T2
K=∞, T3=75(μsec)
R2=600 Ω
C2=0.125 μF
L2=45.0 mH
同様に各種の再生イコライザのLCR値を算出すると以下の表のようになります。
実際に回路を設計するにあたってはコイルの内部抵抗を設計に反映したり、補正回路の設定をする必要があります。またマルチカーブに対応するには各カーブに応じた設計が必要になります。
標準回路と実設計用回路
図④.2が補正回路を含んだ実際の設計用の回路です。こちらには使用するインダクタ部が必ず持ってしまう内部抵抗も回路上に表現しています。また補正回路として、橋本電機が開示しているLCRイコライザーのための推奨回路と同じようにC1の部分に抵抗を並列に挿入する回路構成としています。私は右側の実際の設計用回路の動作をシミュレートできるエクセルファイルを作成してLCRの定数を調整しながら回路の周波数特性をグラフ化するツールを作成しました。
シミュレーションツールの説明
このツールでは実設計回路をいくつかの区分に分けそれぞれの部分のインピーダンスと電圧を計算できるようにしています。図④.2の回路のR1,L1,R11とR2,L2,R22のデルタ回路の部分は下図④.3のようにY型に展開します。
シミュレーションツールの使い方
EQ計算エクセルシートの使い方
解析したいイコライザのセッティング
FC5 再生カーブ名称(メモ用:どのセルも参照していない)
FP7 T1(Low Limit)をμsec単位で記入 (T1=3183μsecのときは3183を入力する)
FP8 T2(Turn Over) をμsec単位で記入 (T2=318.3μsecのときは318.3を入力する)
FP9 T3(Roll Off) をμsec単位で記入 (T3=75.0μsecのときは75.0を入力する)
FP10 入力しないこと:Kの計算結果が表示されます
一次計算の結果表示
FZ11 R1抵抗値(Ω)
FZ13 R4抵抗値(Ω)
FZ18 L1インダクタンス(H)
FZ20 C1容量(μF)
ここで表示されている結果をもとに
FP11 R1抵抗値(Ω)
FP13 R4抵抗値(Ω)
FP18 L1インダクタンス(H)
FP20 C1容量(μF)
に数値を修正して入力する(上記の計算結果と同じ値でもよい)
FP12 R2(Ω) は回路インピーダンスと同じ値である600を入力する。
FP14 R4(Ω)に10^6~10^8程度の大きな値を入れておく
FP15 Ro(Ω)は回路インピーダンスと同じ値である600を入力する。
FP16 R11(Ω) は推定されるL1の直流抵抗分を入力する。
FP17 R22(Ω)は推定されるL2の直流抵抗分を入力する。
L2,C2についてはほぼ補正が不要なため計算結果をそのまま使用する。
FP19 L2(H) この結果を使うので上書きしない。
FP21 C2(μF) この結果を使うので上書きしない。
ここまでの数値が決まったら、描画されたグラフと計算結果を確認する。

グラフ表示色
ライムグリーン=各LCR値を入力したときのイコライザー再生特性(dB)
オレンジ=設定したイコライザーの理想再生特性(dB)
赤=インピーダンスの誤差(Ω) (実imp-設定imp)
ピンク=初段(ターンオーバー)後の再生特性(dB)
青=実特性ー理想特性(dB)
計算結果自体は以下のセルに出力されます。
各LCR値を入力したときのイコライザー再生特性(dB) HV列 (HV26-HV86)
設定したイコライザーの理想再生特性(dB) HW列(HW26-HW86)
インピーダンスの誤差(Ω) (実imp-設定imp) HX列 (HX26-HX86)
初段(ターンオーバー)後の再生特性(dB) HY列 (HY26-HY86) 実特性ー理想特性(dB) HZ列 (HZ26-HZ86)
本シミュレータの計算結果に基づいて実機を製作され、目指した特性が得られなかったとしても著者は責任を負いません。自己責任において製作してください。またシミュレータに間違いを見つけられた方がいらっしゃましたらぜひご連絡をお願いします。